フォローアップ事業は、ICA関連の研修中に作成したアクションプランの進捗状況や
研修で得られた経験・知識の活用状況を調査するものです。
東南アジア・南アジア地域から2か国を選び、現地で行う聞き取り調査と
前述の対象地域から参加した研修員を対象とするアンケート調査の2つの方法で実施しています。
最新の事例紹介
2019年度ICAフォローアップ指導・調査事業(モンゴル)
2019年度の現地調査はモンゴルにて2019年9月30日から10月6日の日程で実施しました。本格的な冬を迎える前の訪問となり、穏やかな気候の中での調査となりました。
今回、受入窓口となったのは、モンゴルの農協の全国組織であるモンゴル農業協同組合連合会(NAMAC)で、視察先の手配や元研修員との連絡など、多岐にわたる調整対応をしていただきました。そして、聞き取りの対象となっていたモンゴルの元研修員たちは、現場である酪農協同組合や獣医師協同組合、農家グループと密接に関わりながらアクションプランを実施しており、研修で得た知識や経験を活用し、組合員の所得や生活の向上に加え、協同組合運動の推進に貢献していました。
1, モンゴルの協同組合の現状
モンゴルの協同組合は食糧・農業・軽工業省が担当しており、2018年時点で4,377の協同組合が登録されています。その大部分は農業協同組合と酪農協同組合です。協同組合法については1995年に初めて草案が作られ、以降何度か修正が加えられ、現在に至ります。今回訪問した際にも、協同組合が資金調達をし易くできるよう修正案を国会に提出した直後でした。加えて、協同組合振興に関する国家事業の第3フェーズ(2019年~2024年)が承認されたところで、協同組合の認知度の向上や生産増加のために様々なイベントが企画されているとのことでした。
今回、訪問した食糧・農業・軽工業省の局長らによると、遊牧民を中心とする牧畜業というモンゴル特有の農業形態により、常に自然の牧草を求め移住している人々に対して組織化を勧めることの困難さがあることや、「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成する上で協同組合が重要な役割を果たすと考えている一方で、担当官や民間レベルで、協同組合の理解が進んでいない現状があると話していました。
モンゴルの農協については、頂上機関としてモンゴル農業協同組合連合会(NAMAC)があり、その傘下に22の県中央会(branch associations)、10の連合会(secondary coops)、630の単位農協(primary coops)、150,000人の組合員を擁しています。NAMACは活動規模や組合員数という点でモンゴル国内において3番目に大きなNGOです。1967年に設立されましたが、社会主義から民主化への変遷を経て、1992年に現在の体制に再編されたとのことです。
2, 元研修員へのインタビュー、協同組合・農民グループ訪問
バヤコシュ農民グループ訪問
定年退職後の所得確保を目的に集まった男女10名のグループです。国際NGOであるカリタスのグリーンハウスプロジェクトをきっかけに組織化し、現在では農産物生産、加工、販売に加え、服や靴といった生活用品の製造も行っています。元研修員であるギーカナラン氏はコーディネーターとしてICA研修で得た知識や経験を活かし、グループに営農や販売、組織運営についての指導を行っています。具体的には、収穫した野菜は、市場価格を見て販売するタイミングを見極めること、冬場に収入の少ない農家に対しては羊の油を使用した石鹸作りを推進すること等です。
また、農民グループが将来的に協同組合に登録できるよう、協同組合の条件である9名以上で組織することを指導したり、販売能力を高める目的で、イベント参加も支援したりしていました。その結果、メンバー間での交流が盛んになり、お互いに情報を共有しあうことで技術や能力を高め合い、野菜を栽培することで節約につながり、所得が以前と比べて約1.5倍になったとメンバーの方々が話していました。加えて、子どもたちへも農業教育ができるようになり、良い影響を与えているとも語っていました。
スーン・ダライ・ツァツァル酪農協同組合
ウランバートルから2時間離れた場所に位置する本酪農協は、2009年に生産者グループとして組織され、2013年に協同組合となりました。16名の組合員と4名の職員で運営されており、主に生乳の集荷・加工・販売を行っています。
組合員やそのほかの遊牧民から持ち込まれた生乳を全量、アイスクリームやカード(乳製品を乾燥させたもの)含め、8~12種類の乳製品へ加工し、ウランバートルや近隣の売店や学校に販売しています。
この酪農協は元研修員であるトール氏とオトゴンボロー氏のアクションプランの対象組合であり、乳製品の品質向上と衛生管理、乳製品の付加価値の創出、販売機会の拡大に取り組んでいます。トール氏は「日本では品質を重要視しており、組合員が皆ルールに従って農産物を出荷していることを学んだ」と話し、この考え方を取り入れた研修を行い、生乳の生産量向上に取り組んだり、生乳保存容器をプラスチックからメタルに変えることで、衛生管理を充実させたりしました。また、販売先の拡大を目的にCOOPショップの設立支援も行いました。
組合長によると、「生産者グループのときは認知度が低く、販売先も無かったが、協同組合になったことで、研修も受けることができ、組織全体の能力も高まり、人々から認識されるようになった。おかげで、加工品の販売量も増え、組合員の所得も向上した。」と話していました。
今回紹介した組織のほかにも、ICA会員組織であるモンゴル協同組合同盟やモンゴル商品取引所主催の協同組合フェア、元研修員の所属組織であるモンゴル民間獣医師診療所協同組合、ボルジゴン・ツヤ遊牧民協同組合などを訪問しました。