JICA ジョージア国・ビジネスを志向したモデル農協構築プロジェクト海外協同組合開発コンサルタント 照沼 弘
2020年1月18日より2月29日まで、JICAの短期専門家としてジョージアに派遣され、環境保護・農業省の農業農村開発庁に配属されて、農業協同組合の課題や今後の振興政策についてアドバイスを行った。
ジョージアはコーカサス地方にある国で西アジアと東ヨーロッパを結ぶ中間に位置している。西側は黒海に面し、北側はロシア、南側はトルコとアルメニアとの国境に面し、東南地域はアゼルバイジャンとの国境に面している。1921年から1991年にかけて、ジョージアはソビエト連邦の一部であった。首都であり最大の都市はトビリシである。ジョージアの国土は69,700平方キロメートルで、人口は375万人である。
ジョージアは農業国であり、農村の人口が多い。また、ソビエト連邦時代にはジョージアは良質な農産物の産出国として知られ、農産物やアル―コール飲料は、独立国家共同体(CIS)の中でも健康的かつ優れた食品としてのブランドを維持している。
ジョージアの農業協同組合は2013年に農協法を施行して、行政の支援のもと、約1,400の小規模農協ができているが全組合員数は約1万人で全国の農家の加入率は1%程度である。ジョージア訪問中に6地域(Shida Kartli、Samtskhe-Javakheti、Imereti、Racha-Lechkhumi and Kvemo Svaneti、Samegrelo-Zemo Svaneti、Kakheti)の20農協を訪問した。
組合員の農協への参加形態や農協事業の利用方法から大きく分けて4つの形態に分類することができる。
(1)ワンオーナーと職員=組合員で構成される農協
(2)生産活動を共同で行い、共同で販売し収益を給料として分配する農協
(3)生産は個々に行い、加工のみ農協を利用し、販売は個々に行う農協
(4)生産は個々に行い、農協が原料を買取り、加工して販売している農協
これらの農協は小規模で組合員数は5名~64名で、農協の形態は作物別の専門農協である。訪問した農協では、ワイン、はちみつ、ナッツ、フルーツ加工、リンゴ、酪農(チーズ)、畜産(肉牛)および魚の養殖を行っていた。ジョージアは1991年に旧ソビエト連邦から独立したが、それまであったコルホーズが解体された。ジョージアの農家はコルホーズ時代の苦い経験から農業協同組合に対する強いアレルギーを持っており、農協振興はまだ始まったばかりで、なかなか進まない。
協同組合原則に基づく民主的な農業協同組合に関する関係者の理解は十分でなく、様々な誤解や試行錯誤が繰り返されている中で、日本の農業協同組合の経験に学びたいという要望が強く、今後も日本との協力が継続されることが期待されている。
*ENPARD:ヨーロッパ近隣諸国農業・農村開発支援事業